メディアフォーカス

イラクのハビブIMN総裁来日 放送の現状を語る

イラク戦争終結をうけて,2003年6月に新たな放送機関として,イラク・メディア・ネットワーク(IMN)が設立された。テレビ,ラジオの放送とともに新聞の発行もおこなっている。戦闘終結後も混乱の続くイラクで,民主化推進の役割を期待されているが,このIMNのハビブ・アルサデル総裁が,9月外務省の招きで日本を訪れNHKなどを訪問した。ハビブ総裁に現状を聞いた。

IMNの現状

職員は2,700人いるが,このうち950人が警備要員である。戦争で国内の放送施設がかなり破壊され,現在6つのテレビスタジオと8つのラジオスタジオを整備中である。テレビでは「アルイラキヤ」というチャンネル名で放送している。内容は,報道から娯楽までの総合編成で放送しており,視聴者の間にとけ込みつつある。このほか,スポーツチャンネルを地上波,衛星で放送し,さらに「アルイラキヤ2」では文化関係の番組をトルコ語やクルド語なども使って放送している。ラジオ放送は「イラク共和国放送」をAMとFMで放送しているほかコーラン専門の放送もおこなっている。地方では9つの州に放送局があり,独自の番組を制作している。 IMNは放送のほか日刊紙「ザ・モーニング」を発行し,地方でも5つの新聞を編集発行している。

編集方針

IMNはCPA(暫定行政当局)のブレマー長官の行政令66号に基づいて,設立された放送局である。財政的には政府の支援をうけるが,独立性は確保されており,これまで政府からの干渉をうけたことはない。

編集方針としては,全イラクの国民的一体感の確立が重要であり,また一つの意見には別の意見があるという考え方を基本に対話する文化の浸透を推し進めている。具体的な役割としては,憲法,選挙など新たな政治プロセスについて国民の認識を高め,サダムの時代から脱却することが重要と考えている。そのためにもメディア・パワーの強化が必要で,アルイラキヤの記者をアラブ各国の主要都市に特派員として派遣し取材力のアップを目指す。またジャーナリストの層を厚くするため,メディア・アカデミーのような養成機関をできるだけ早くバグダッドに設立する。

メディア規制について

アルジャジーラのバグダッド支局が去年の8月以来,イラク移行政府の命令で閉鎖されたままとなっている。アルジャジーラの報道はテロや暴力を扇動するニュースが多く,多民族のイラクをバラバラにする可能性がある。この意味でアルジャジーラのニュースは信頼性と客観性に欠けており,政府の閉鎖措置はやむを得ないと思う。

      ※

CPAは第2次大戦後の日本やドイツを手本に,イラクでも放送を民主化の柱として位置づけて法整備をおこなった。すなわち行政令65号でアメリカの FCC(連邦通信委員会)を範とする国家通信メディア委員会を設立した。また66号では,BBCやNHKを範とし公共放送を目指すIMNを設立した。しかし主権がイラクに移行したあと,国内では不安定な社会状況が続き,イラクでの表現の自由をめぐる情勢は予断を許さない。

太田昌宏