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独ARD,受信料額改定で物価指数連動方式を提案

ドイツの公共放送連合体ARDは,各州政府首相に対し,受信料額を物価指数に連動して改定する方式の導入を提案した,と7月13日発表した。この方式は,連邦統計庁の作成する一般消費者物価指数に連動させて,2年ごとに受信料額を改定するというものである。

この背景には,2004年に行われた受信料額改定の際,「公共放送の財源需要の審査および確認のための委員会」(KEF)が提出した答申を各州政府が承認せず,不況と政治日程を理由に,値上げ幅を抑えた上,実施時期を遅らせたという事情がある。ARDはこの前例のない州政府側の対応に対して連邦憲法裁判所に提訴することを6月14日に決定したが,同時に,もはや現行の制度では公共放送の独立性が保障されないとして,新しい受信料額決定の手続きを検討していた。もし各州政府が,ARDの提案を受け入れれば,予定している憲法裁への訴えを取り下げる構えである。

これまでARDは,「放送事業に特有の財源需要は一般の物価上昇率とは異なる。公共放送には存続だけではなく将来の発展のための財源も保障されるべきである」という見解をとっていた。しかし今回ARDは,「公共放送の拡大の時代は過ぎ,公共放送も現実の経済的状況に沿い,要求を減らすことが必要である」と述べ,これまでの方針を転換した。

ARDの提案に対し,州首相の中には前向きに検討する価値があると評価する声もあるが,同じ公共放送のZDFやドイチュラントラジオは,公式的な意見表明を行っていない。

杉内有介