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過熱するDVR(デジタル録画機)市場

アメリカでDVR(デジタル録画機)を使ったサービスやビジネスが新たな局面に入り,競争が加速し始めている。

まず業界最大手のTiVo社は1月3日,同社のDVRで録画したコンテンツをパソコンでも視聴できる新サービス「TiVo To Go」をスタートさせた。また1月5日からラスベガスで開催された家電見本市(CES)では,この「TiVo To Go」を含む次世代のプラットフォーム戦略「Tahiti」を発表して注目を集めた。TiVo社は1997年に設立されて以来,DVR業界のパイオニアとして広く知られ,月額12.95ドルでレンタルするサービスで,現在およそ300万人の利用者がいる(購入も可能)。ハードディスクを内蔵した同社の DVRは,番組検索機能やネット経由のEPG機能などを備えており,若者層を中心に広くユーザーを獲得してきた。

「TiVo To Go」は,TiVoの「Series2」と呼ばれる機種向けの無料アップグレードとして提供されるサービスで,録画したコンテンツをパソコンに転送し,再生することができる。新興の格安DVRにはないサービスを付加することで利用者の拡大を狙っている。転送に必要なソフトウェアは自動的にダウンロードされる仕組みになっている。「Tahiti」はこの「TiVo To Go」を含む次世代のプラットフォーム戦略で,従来のテレビ中心のサービスにネットワーク機能を付加してブロードバンドとの融合を図るものである。これにより,①インターネットのブロードバンドコンテンツを扱える,②テレビショッピングなどに対応する決済機能を持つ,③携帯電話やノートパソコンとのネットワーク化によりデータの転送や携帯電話からの録画予約などができる,④視聴履歴などからブロードバンド上のコンテンツや情報をユーザーの視聴パターンに応じて表示する,などの諸機能を備える。「Tahiti」に対応するソフトウェアは来年にかけて順次リリースされる予定である。

一方,衛星放送第2位のエコスターは,1月7日,独自のDVRサービスを今年3月から開始すると発表した。これはTiVo社と連携してサービスを展開するディレクTVに対抗するもので「ディッシュ・オン・デマンド」と名付けられている。ハードディスクを搭載したDVR625という機種を使って,TiVoのように番組を録画するだけでなく,100タイトル程度の映画がオン・デマンドで視聴できるサービスを受けられる。またエコスターは,2種類のチャンネルを家庭内の別々のテレビで同時に視聴できる機種も発表。この機種は業界で初めて2つのチューナーを内蔵し,250GBのハードディスクも備える。今年1月で契約者が1,100万人を上回ったエコスターは,これら独自のDVRサービスによって更にシェアを伸ばしたいとしている。

これらのDVR新機種・新サービスの相次ぐ登場に加え,アメリカではハードディスク機能のみのDVR機種の低廉化が進んでおり,安いものでは80ドル以下で購入可能になっている。このためここ数年でDVRの普及は急速に進み,2010年までにはテレビ所有世帯の過半数(約5,800万世帯)がDVRを所有するという予測もある。DVRをめぐる競争は今後ますます激しくなっていくと見られる。

米倉 律