国内放送事情

ポスト東日本大震災の市町村における
災害情報伝達システムを展望する

~臨時災害放送局の長期化と避難情報伝達手段の多様化を踏まえて~

東日本大震災後の災害情報の伝達システムを巡っては、大きく2つの新たな現象を見ることができる。臨機の措置として運営するために開局した臨時災害放送局(災害FM)の長期化と、これまで防災行政無線(同報系)を主軸としてきた避難情報の伝達システムの多様化である。

臨時災害放送局とは、自治体等が免許主体となり、地域で必要な災害情報を、住民である被災者に伝達することを目的として運営されるFMラジオ局のことである。今回の大震災では、2012年1月末までに災害史上最多の27局の臨時災害放送局が開局した。開局した27局のうち、2012年1月末現在も19局が放送を続け、2月以降も2局が開局を予定している。臨災局の放送は、災害情報といっても、避難・救援・安否・生活・復旧と多岐に渡るが、運営の長期化に伴い、こうした情報の伝達だけでなく、復興・地域再生の伴走者としての役割も担い始めている。

また、今回の大震災では、これまで市町村における避難情報伝達の主軸となってきた防災行政無線(同報系)の被害が相次ぎ、機能の脆弱さが露呈した。そのため、大震災後は、その補完・代替として最適な手段とは何か、より確実に住民に災害を認知させ、避難行動につなげるためにはどのような避難情報の伝達システムを構築すべきなのか、模索が始まっている。“安心安全”をビジネスチャンスと捉え、新たな機能・端末の開発も進んでおり、またラジオのデジタル化を内包するV-LOWマルチメディア放送についても、“安心安全”を主要な目的としてまもなく実証実験が行われる。

本稿では、今回大量に開局した臨災局の実態調査と、大震災後の避難情報伝達に関する最新動向の取材を通じ、ポスト東日本大震災の市町村における災害情報伝達システムとはどのような姿なのかを考える。

メディア研究部(メディア動向 )村上圭子