国内放送事情

バンクーバーオリンピックはこう見られた

~時差対策にみるメディア活用術~

今年2月にカナダのバンクーバーで開催された冬季オリンピック。バンクーバーと日本の時差は-17時間ある。多くの競技は現地時間の午前9時から夕方にかけて行われたので、日本時間にすると深夜2時から昼過ぎとなる。視聴者にとってはテレビを見やすい時間帯とは言いがたい。

送り手は生中継をした後も、視聴者の見やすい時間帯に再放送やハイライトの番組を構えてサービスをするところに勝負をかけるだろう。 しかし、今や多くの家庭にデジタル録画機やパソコンが普及し、簡単に長時間録画が可能な時代である。 “-17時間の時差”を視聴者はどう受け止め、どのようにメディアを活用したのか。

今回の調査では、完全デジタル化を目前にして既にデジタル機器を利用している“先進的視聴者”に注目し、インターネットによるアンケート調査を実施した。

対象者の必要条件としては調査会社に登録しているモニターで①地上デジタル放送、②BSデジタル放送、③デジタル録画機、④ワンセグ放送、⑤パソコンのすべてを利用している人とし、それに加えてインターネットやデジタル機器の動向にもある程度関心、興味のある人を選定した。 対象者の人数は1回が400人(20歳代から50歳代までの各年代の男女50人ずつ)で、期間中に3回実施したので合計1200人となる。

それを集約した結果、様々な傾向が見えてきた。

インターネットの利用者数が北京オリンピックよりも大幅に増加すると共に、データ放送、動画配信、デジタル録画機、の利用者も割合としては全体の中ではまだ低いが、数としては着実に増えて、広がりをみせている。

ビッグイベントに際して視聴者は情報を単に受けるのではなく、「取得」し、「発信」するのがこれからのメディア活用の方向性となることは確実である。 送り手も新たなメディア環境の構築へ向け、柔軟な発想で体制を見直す事が必要である。

メディア研究部(メディア動向)荒川 信治