国内放送事情

公衆警報の様式統一と放送

~米国のCAP導入と気象庁XML~

インターネットや地上デジタル放送、携帯ネットワークなどの多様なメディアに緊急情報を如何に手際よく迅速に伝えるか、世界各国で公衆警報システムの見直しが進められている。公衆警報の内容自体も、観測(警戒)技術の発達などによって、詳細化・細分化する傾向にある。 しかし、放送事業者や自治体にとっては、視聴者や住民に分かりやすい形で配信できることが重要である。

このため、日本の気象庁は、警報の様式をマークアップ言語のXML(Extensible Markup Language)を使ったものに統一することになった。一方、アメリカでも公衆警報を、XMLベースのCAP(Common Alerting Protocol)という様式に統一し、多様なメディアに伝送するプロジェクトが進行中である。

何故XMLなのか。これはXMLが情報量が増え複雑化した情報を、わかりやすく自在に仕分けできるためである。また様式を統一するのは、警報やメディアの種類によっていちいち様式が違っているのは不便だからである。

アメリカでは、第二次大戦後の冷戦時代から今日まで、放送が公衆警報システムの主役を務めてきた。しかし、多メディア化の進展に伴い、大統領府の国家科学技術会議は、あらゆるタイプの警報を各メディアのシステムに即座に送信できる標準的な様式が必要であると勧告し、CAPが作られた。CAPは、多様なメディアを結集した次世代型公衆警報ネットワークに採用されることになった。CAPは、連邦機関や州政府、地方機関が出す各種警報を緊急度などの優先順位に従って各メディアに手際よく送信する構造になっている。

一方、日本の気象庁XMLで様式が統一されるのは、「気象警報・注意報」、「台風情報」、「津波警報・注意報」「噴火警報・予報」、「天気予報」、「週間天気予報」などで、気象庁が出す警報がすべて網羅されている。気象庁では、2010年5月下旬以降、市町村区分ごとに出される予定の「気象警報・注意報」からXMLによる統一様式で送信を開始し、2011年3月からは対象となる防災情報の様式をすべてXML化する方針である。気象庁XMLは、細分化し高度化した警報を、現状に則した形で明瞭・迅速に伝える構造になっている。

メディア研究部 福長秀彦