国内放送事情

『真相報道 バンキシャ!』『サンデージャポン』に放送倫理違反

~BPO 2委員会が相次いで「勧告」~

2009年7月から8月にかけて、日本テレビの『真相報道 バンキシャ!』とTBSの『サンデージャポン』が、放送倫理・番組向上機構(BPO)の2委員会から相次いで重大な放送倫理違反を指摘され、再発防止策等を「勧告」された。番組不祥事に関して総務省の行政指導が強化されるなか、放送界はこの機会に不祥事の原因を徹底的に洗い出して再発防止に努め、放送の自由を守らなければならない。この視点から、BPO委員会の2番組に対する「勧告」に基づいて、なぜ不祥事が繰り返されるのか、その原因について問題点を整理した。

『真相報道 バンキシャ!』は2008年11月23日に『独占証言・・裏金は今もある』と題したコーナーを放送した。番組では、2006年に県庁の大掛かりな裏金作りが明るみに出た岐阜県でいまも裏金作りが行われていると、土建業者の証言に基づいて告発報道を行った。ところが、この証言が虚偽であったことが判明し、日本テレビは岐阜県に謝罪するとともに、社長が引責辞任する事態となった。誤報の最大の原因は、証言に対する裏付け取材がほとんどなされておらず、虚偽証言を見抜けなかったことにあった。

『サンデージャポン』は2008年10月19日、大阪門真市の保育園のイモ畑が、高速道路建設のため行政代執行された問題を取上げた。このコーナーでは、裁判所で収用裁決の取消しを求める訴えが棄却されたにもかかわらず、代執行当日に園児をイモ畑に動員して反対させたかのように報道された。しかし、園児は代執行当日は現場には行っておらず、収用裁決に関する裁判所の判断もまだ下されていなかった。裁判所の審理については杜撰な報道が指摘され、園児の動員に関しては、前日に撮影した園児の映像をあたかも当日のように編集する作為があったとされた。

この2つの事案は、番組制作にかかわる放送界の課題として、安易過ぎる情報番組への対応、企画意図を優先する情報収集、映像偏重主義、番組の外注・制作委託の問題点を浮かび上がらせた。

メディア研究部(メディア動向)奥田 良胤