国内放送事情

警報伝達と携帯ネットワーク(下)

~公衆警報システムへの新展開~

9.11同時多発テロやスマトラ沖の地震・津波などを契機として、警報を公衆に的確に伝えるための調査・研究が世界各国で広範に行われるようになった。普及が進む携帯端末のネットワークを警報配信に利活用しようという傾向が国際的にも顕著になっている。

第3世代携帯の標準仕様を策定する国際プロジェクトでは、携帯ネットワークを使って公衆警報システム(PWS:Public Warning System)を構築する際の要件をまとめた。また、PWSのサブシステムである地震津波警報システム(ETWS:Earthquake and Tsunami Warning System)の技術仕様書を作成した。アメリカでは、商用移動体通信による全米規模の警報システムが構築されることになった。それらの基本的なコンセプトを考察した。

3GPPによるPWSとETWS、アメリカで新たに構築されることになった警報システムには、共通点が2つある。その1つは、警報を手際よく、タイムリーに伝えるために「カテゴリーとプライオリティ」の考え方を採用していることである。警報を緊急度などによってカテゴリー別に分類し、プライオリティの高い方から配信する。ETWSでは警報をPrimaryとSecondaryの2つのカテゴリーに分ける。 Primaryは最も迅速に伝えるべき警報で、一般向け緊急地震速報や津波警報がこれに当る。Secondaryは、いま少し時間的な猶予がある場合の警報で、避難の指示や勧告などを含む。プライオリティの高いPrimaryから順番に配信される。一方、アメリカの商用移動体通信による警報システムでは、警報のカテゴリーとして①国家の非常時に大統領が出すPresidential②ハリケーンなどの場合のImminent Threat Alerts③子供の誘拐に関するChild Abduction Emergency/Amber Alertsの3種類がある。①は②、③に優先して配信される。

2つ目の共通点は、Aggregatorという特殊な機関を想定していることである。このAggregatorは、政府機関や地方自治体が出す各種の警報を収集し、携帯などのネットワークに転送する。PWSの場合には、様々な警報がネットワークに殺到して配信に手間取ることがないように、 Aggregatorが警報に優先順位をつけて順番に転送することも想定している。アメリカのシステムでは、Aggregatorは警報が適正なものかどうかの認証を行なう。

メディア研究部 福長 秀彦