国内放送事情

シリーズ“融合”時代 放送メディアの課題と可能性①

アナログ停波へ厳しさ増す環境

~急がれる受信側の準備~

アナログ停波の期限が2年後に迫っているが、厳しい経済情勢が続く中、デジタル受信機器の普及低迷や共聴施設の改修難航など視聴者の準備の遅れが目立ち始めている。本稿では、2009年1月に実施した世論調査や、3月に放送事業者などを対象に行ったアンケート調査、同じく3月に実施した共聴施設利用者に対するインターネット調査に拠りつつ現状を整理するとともに、アナログ停波に向けて何が課題になっているか探った。

アナログ停波に向けては、デジタル受信機器の普及が目標を下回っていることが明らかになっているが、世論調査でも、地デジ対応はアナログ停波の時点で行うと答えた人が39%に上り、対応を急がない視聴者が多いことがわかった。こうした準備の遅れを懸念する意見は民放やケーブルテレビ事業者の間で広がっており、事業者アンケートでも課題として挙げられたのは、受信機器の普及や共聴施設の改修問題といった受信側の問題だった。

特に共聴施設の改修に関しては、住民どうしの協議や受信障害の原因者との交渉で時間がかかることから、早急に手を打たなければ厳しい事態になることが予想されているが、地デジを視聴できる環境にない共聴利用者を対象にしたインターネット調査からは、必ずしも順調に進んでいない実態が明らかになった。集合住宅共聴利用者については、どのようにして改修するか決まっていないとする回答が51%に上り、さらに改修に向けても、「予想以上の費用がかかる」、「アパートの大家などに改修してもらうのが難しい」、「費用を負担しようとしない人がいる」といった問題を指摘する意見が出されている。

このように受信側の準備の遅れが顕在化する中、世論調査で「予定どおりアナログ放送を打ち切るべき」と答えた人は35%にとどまり、「数年は停波を延期すべき」、あるいは「アナログテレビがすべてなくなるまで放送を継続すべき」と答えた人はあわせて55%に上っている。

メディア研究部(メディア動向)村上聖一