国内放送事情

「調査報道」の社会史

~第3回 「特別調査報道」の社会的影響~

報道には「発表報道」と「独自報道」があり、その内、①報道しなければ日の目を見ない事実を②(発表ではなく)独自に調査し、③自社の責任で報道するのが「調査報道」であることを過去の事例などから見てきました。さらにこの「調査報道」に、④「権力」「権威」ある者や組織の不正や腐敗、怠慢などを取材対象とし、⑤その報道を各社が追随し、⑥そのことで国民の関心を高め、⑦「権力」や「権威」に何らかの影響を与える報道を加えて、筆者は「特別調査報道」と名付け、従来の「調査報道」と区別してみました。今回は、7つの条件を満たした「特別調査報道」の中から、「権力」を(1)政治権力追及型、(2)組織権力追及型、(3)複合権力追及型の3つに分け、8つの実例(1.田中角栄研究、2.KSD事件、3.菅生事件、4.志布志事件、5.商工ローン、6.旧石器ねつ造発掘、7.薬害エイズ、8.ワーキング・プア)とその影響を取り上げています。

「調査報道」の影響については、『文藝春秋』の「田中角栄研究」や朝日新聞横浜支局の「リクルート疑惑」のように、政権が倒れるなどすぐに影響が出るものもあれば、毎日新聞の「薬害エイズ」のように何年もかかって、やっと日の目を見た「調査報道」もあります。「調査報道」や「特別調査報道」で各社がいつ追随し、影響が出たか、期限を設けていないのは、息の長い報道も「調査報道」だと考えるからです。

「調査報道」「特別調査報道」のいずれも発表報道とは違う、意義のある報道であり、ジャーナリズムを活性化させる重要な報道スタイルだと考えます。

メディア研究部 小俣 一平