国内放送事情

「調査報道」の社会史

~第1回 調査報道とは何か~

「調査報道」は、一言で言えば、発表に頼らぬ自前の報道、つまり自社で調べて、自社の責任で報道する記事やニュースのことである。1960年代後半から70年代にかけて、アメリカでは「調査報道」が盛んに取り上げられた。ちょうど「ベトナム秘密報告」のすっぱ抜きや「ウォーターゲート事件」といった歴史に残る「調査報道」が紙面を埋めていた時期だった。しかし80年代以降、アメリカの「調査報道」は一気に下降線をたどり始める。21世紀に入って新聞社の買収が相次ぎ、利益優先、コスト削減のため経費のかかる「調査報道」は経営者にとって“金食い虫”としか映らない。

では日本の『調査報道』はどのようになっているのであろうか。紙面や画面で見る限り各社は常に「調査報道」でしのぎを削っているように見える。しかし活字離れ、テレビ離れがメディアを直撃している。インターネット時代を迎え、情報が氾濫する中、新聞読まない、放送見ない、雑誌買わない世代が急速に増えている。大学生たちのほとんどが、インターネット配信のニュースで事足りるとしているからだ。だがインターネット時代になればなるほど、新聞、テレビ各社の存在価値を際立たせるものとして「調査報道」があるのではないだろうか。いまこそ、「調査報道」とは何かを考える時期に来ている。

本稿は、数多のジャーナリストが思い描いている「調査報道」観に言及しながら、ジャーナリズムを担う者たちが、今世紀を生き延びる手だてとして「調査報道」が欠かせないものであることを明らかにしていきたい。

メディア研究部 小俣 一平