国内放送事情

勃興期のVODマーケット

~相次ぎ参入するプレーヤーの動向~

HDDレコーダーが普及して、見たいときに見るという視聴スタイルが広まるなか、VODのマーケットが、にわかに活気付いている。本格的なVODの普及は、「プル型視聴」を広めることにつながり、それは放送をとりまくビジネスにどのような影響を及ぼすのか。長らく無料での視聴が当たり前だった日本のTV視聴者に、どのようなサービスなら有料でも受け入れられるのか。VODサービスを提供する各事業者、ならびに、放送局各社への業界アンケートや、関係者へのヒアリングに基づき、VOD勃興期の現状を整理する。

VOD市場が活気付いている背景には、インフラの整備と相次ぐ事業者の参入がある。 DSLやFTTH(Fiber To The Home:光ファイバー回線)などのブロードバンド回線の契約者が、総世帯の半数を超え、さらに今年6月末時点で、ブロードバンド回線契約者のうち、FTTHの契約者数がDSL契約者数を追い抜いた。また今年3月には、NTT東西が展開するIP網「NGN(Next Generation Network)」のサービスが始まった。ブロードバンド環境とIP網の双方の整備により、PCだけでなくテレビを通じて、高画質高音質の映像を安定的に楽しむ環境が整いつつある。

「プル型視聴」の広がりと、インフラの整備。機は熟したとばかりに、様々な事業者が相次いで名乗りを上げて、VODサービスをスタートさせている。民放各局もVODサービスを展開するが、それぞれに特徴があり、スタンスも違う。VODのサービス勃興期にあたる今、各事業者は利用率を上げるため試行錯誤を繰り返す。アンケートとヒアリングを通して、VOD市場の今後を展望する。

メディア研究部(メディア動向)小川 浩司