国内放送事情

“YouTube現象”は何を問いかけたのか?

ここ数年、放送と通信の融合・連携に関するさまざまな論議が交わされ、ネットによる有効な動画配信ビジネスへの模索が続いている。そんなさなかに、忽然と登場したのが「YouTube」である。創設間もないアメリカ発の動画投稿ウェブサイトが、世界中から大きな注目と支持を集め、瞬く間にネットの主役に躍り出たのだ。特に日本での人気は爆発的で、全編英語のサイトにもかかわらず空前の成長を遂げ、今や最もアクセスの多いサイトの一つとなっている。

一体どうして、アメリカ発の一投稿サイトが、日本でこれほど熱烈な支持を集めたのか? 日本のテレビ局や著作権団体は、権利処理を無視したコピー映像が氾濫するYouTubeをどう意識し、どんな対策を取っていこうとしているのか? さらに、この「YouTube現象」が、放送と通信との融合・連携論議に対して投げかけたものは何なのか?

こうした観点から、BBCとの提携やVIACOMによる巨額賠償訴訟など海外の直近の動きを交え、日本のメディア界を揺るがしたYouTube現象を報告するとともに、その根本に横たわる日米双方のデジタル著作権問題を検証する。さらに、各テレビ局やJASRACをはじめ、日米の著作権法に精通する弁護士やWeb視聴率調査会社に聞き取り調査を行い、YouTubeがメディア界に投じた一石を分析していくことにより、ネット時代の放送の可能性と将来像を探る。

主任研究員 四方康嗣