国内放送事情

“舞台装置”に見る放送と通信の「融合」

~映像サービスに関わる事業領域~

「放送と通信の融合」をめぐるさまざまな議論や動きを理解するため、いま視聴者が享受可能な映像サービスの形態を、放送、ケーブルテレビ、IPマルチキャスト放送、ブロードバンド配信の4つに分類し、そのそれぞれのサービス形態を「端末」「伝送路」というハード領域と「コンテンツ」領域が、どのような事業関係で構成されているか、全体的に見渡す作業を行う。

「端末」領域では、従来のテレビでは端末の機能が特定の映像サービス事業の受信に限定されていたが、端末機能が多様となるなか、放送事業者と機器メーカーの連携のあり方が一つの焦点に浮上している。

「伝送路」領域では、従来のコンテンツ・伝送路一体型事業を前提とする常識が、事業者の多様化と伝送路選択肢の広がりを背景に、事業者間での伝送路の共用や、通信事業者との役割分担など、効率性の視点から多彩な形態が広がっている。

「コンテンツ」領域では、伝送路領域の多彩さに伴い新規事業者が広がり、流通事業が多様化しているが、オリジナルなコンテンツの多様性は必ずしも広がらず、二次送信に関心が集中しがちな傾向がある。

現在、関心はIPマルチキャスト放送とブロードバンド配信に集中しているが、それぞれ「事業の多層化」と「コンテンツの多様性」の視点でとらえられる。サービスを享受する視聴者の目的はコンテンツであり、融合議論には、単に事業の多層化ではなく、コンテンツやその提供事業への支持と信頼の視点が欠かせない。

研究主幹 竹内冬郎