国内放送事情

連続インタビュー「情報社会のゆくえ」⑤

「どうしたんだ!?双方向テレビ」

(株)トマデジ・事業本部長 舟橋洋介氏
 NTTメディアクロス・シニアマネージャー 佐藤浩之氏

「高画質」「多チャンネル」と並ぶデジタル化の3大セールスポイントといわれる双方向サービスの存在感が、今なぜか薄い。その理由を5年前のBS デジタル放送開始以来、放送局に近い立場から民放各社の双方向番組の制作に関わってきた株式会社トマデジの舟橋洋介氏、通信事業者の立場でシステム構築に関わったNTTメディアクロスの佐藤浩之氏に聞いた。

するとBSデジタルでは、双方向を普及の切り札としたのに民放各社が個々にばらばらのフォーマットを組み、それぞれが参加する視聴者を囲い込もうとした結果普及が遅れたこと、ブロードバンドの予想外に急速な普及でデータ放送が陳腐化したこと、放送と通信のビジネスモデルの違いから現場に制作上の、また経理上の摩擦が生じたことなど、「停滞」の原因が明らかになった。

では双方向テレビの「これから」はどうなるのか?BSデジタルでビジネスモデルを作れなかった佐藤氏は、いまデジタルという言葉は忘れて、アナログ地上波とアナログ電話という最も普及したメディア同士を掛け合わせてクイズ番組をつくり、マスを対象にした双方向テレビの原型を作ろうとしている。デジタルモデルはその延長上にしかありえないという。一方舟橋氏は双方向テレビの本番は、あくまで地上、BSデジタルが100%近く普及したときで、そのとき双方向サービスは社会の当たり前のツールになるだろうと予測するが、それはあくまでテレビ局がそれを使って積極的に新しい番組に取り組むことが前提だと指摘する。

主任研究員 七沢 潔