国内放送事情

地上デジタル放送1年の動向と今後の展望

地上デジタル放送は開始1年で8地域26局が開局し、直接受信できる世帯数は約1800万となりました。いっぽう対応受信機も約258万台出荷され、「おおむね順調」なスタートといえます。さらに放送開局ロードマップも公表され、「普及加速」にむけ新たな段階に入ろうとしています。

しかし2011年7月に予定されているアナログ放送終了から逆算すると、課題は依然山積しています。デジタル波のサービスをどう全国津々浦々に発信するのか。新サービスを視聴者にとって魅力あるものにどう充実していくのか。そして4800万世帯1億台というデジタルテレビ普及をどう実現するのか。放送事業者、受信機メーカーなど関連企業、国、自治体は、早期に普及の方策についての議論を進め、相互の役割分担と連携の中で対応策を実施しなければなりません。

一方で、放送と通信の連携が進もうとしています。行政情報や災害情報がテレビで提供されたり、携帯電話などでも連携サービスが登場します。さらにデジタル録画機の普及や高度化により、サービスの幅は一段と拡大しようとしています。アナログ停波に向けた課題の克服は、こうした局面から解決の方向性が見えてくる可能性もあります。

本稿では、NHKおよび民放127社と、地域の情報高度化を進める全国47都道府県へのアンケートとヒアリングに基づき、地上デジタル1年の現状と今後の展望について整理を試みます。

放送研究主任研究員 鈴木 祐司