番組研究

制作者研究<テレビ・ドキュメンタリーを創った人々>

【第6回】木村栄文(RKB毎日放送)

~ドキュメンタリーは創作である~

シリーズ第6回は九州・福岡を拠点に、約40年にわたって数多くの優れたドキュメンタリー番組を世に送り続けた、RKB毎日放送の名物ディレクター、木村栄文(1935-2011)。

「文句があるなら、自分の親に、子に、妻に、水銀を飲ませてみろ。そうすればこの地獄がわかる」-石牟礼道子の同名小説を原作に、俳優の北林谷栄扮する琵琶瞽女が水俣の町をさまよい歩く『苦界浄土』(1970、文化庁芸術祭大賞)、筑豊の炭鉱街を舞台に虚構と現実がない混ぜになった世界を描く『まっくら』(1973)、番組の放送がきっかけで主人公が経営する会社が倒産に追い込まれた『鉛の霧』(1974放送文化基金賞)、一人の父親として知的障害をもつ愛娘にカメラをむけた『あいラブ優ちゃん』(1976ギャラクシー賞)。「賞獲り男」と呼ばれ、話題作を連打し続けた木村は、他局のテレビ制作者たちに広く影響を与えた。現実にドラマが侵入し、ときに自らも「道化」となって画面に登場する型破りで自由な作風、一貫して描かれるのは人間の可笑しさ、美しさ、そして哀しさ。「ドキュメンタリーは創作である」と語った木村栄文は、どのようにしてその豊かな表現を獲得したのか。その過程を丹羽美之氏(東京大学大学院准教授)が明かす。

東京大学大学院情報学環 丹羽美之
メディア研究部 七沢 潔