番組研究

親子・友人の関係が子どものメディア行動に及ぼす影響を探る

~小学生の子どもがいる家庭のウェブ調査から②

11月号に引き続き、全国の小学生の子どもがいる家庭(父・母・子)を対象に行ったウェブ調査から、家庭におけるメディア利用と親子の結びつきについて考える。

今号では、子どものメディア利用行動の内的要因に焦点をあて、前号で作成したモデルに親子の信頼関係や友人とのコミュニケーションといった対人関係を加えて分析を行った。また、NHK放送文化研究所と共同研究を進めている山梨大学教育人間科学部・酒井厚准教授とともに、発達心理学からみたアプローチを試みた。

Ⅰ分析の経過

調査では、親子間の信頼関係の度合いを測定する「心理尺度」を加えていたが、その結果を「親子間の信頼関係の良好度」という因子にまとめてモデルに組み込んだ。

また、友達関係におけるメディアの位置づけ(友達との間でよく利用しているか、よく話題になっているかなど)に着目し、「メディアに関する友達とのコミュニケーション」という因子にまとめた。さらに、子どものメディア利用実態と子ども自身のメディアに対する態度や意識との関係については、探索的な因子分析を行い、抽出された3つの因子を「子のメディア態度の健全度」としてモデルに加えた。

分析では、共分散構造分析に基づくパス解析の手法で、メディアを介した結びつきと親子・友達関係とについて総合的にとらえることを目指した。

Ⅱ分析の結果

今回のモデルでは、「親子間の信頼関係の良好度」と、メディア利用と親子間の関わり方を示す3つの因子、すなわち「親と子の共同利用(テレビの共同視聴やゲームの共同利用)」、「親のフィルタリング(テレビやゲームの利用規制)」、「親の“甘い”対応(規制の必要はわかっていてもつい大目にみてしまう)」のそれぞれとの間に有意な関係がみられた。また、「メディアに関する友達とのコミュニケーション」が「子のメディア態度の健全度」に有意な影響を与えることが示唆された。

Ⅲ分析のまとめ

今回得られた知見は、次の2点である。

  • 親子間に信頼関係が存在することで、子どものメディア利用に対する親のコントロールが有効に機能し、子どものメディア利用やメディア態度・意識が健全なものになる。
  • 子どものメディア態度・意識は、メディアに関する親子間のやりとりばかりだけでなく、友達関係という、子ども同士のやりとりからも影響を少なからず受ける。

子どもの対人関係は、成長に伴い親子の関係よりも友達との関係の方が、その重要度を増していく。子どもが、親と友達の影響をどのように整理しながら自身のメディア態度を形成していくのか、その詳細についてはさらに検討を重ねていきたい。

メディア研究部(番組研究)渡辺 誓司
計画・総務部(計画)    西村 規子
山梨大学准教授       酒井  厚