ことばウラ・オモテ

外来語と省略

外来語が多くなって、わかりにくくなったと言う声を聞くことがあります。

現在私たちが使っている日本語のおよそ2割が外来語だということも言われています。 外来語のわかりにくさを生む理由は2つありそうです。

1つはことばそのものになじみが無く、意味がわからないということ。
2つ目は、外来語を使う人が、外来語だらけの文章を作るということがあります。

亡くなった漫画家の赤塚不二夫さんの『おそ松くん』に登場するフランスかぶれのイヤミ氏のセリフが戯画化されたよい例でしょう。

外来語は「しゃれた感じがする」「新しい感じを出せる」「外国風」というイメージを持ちます。これをうまく使うか、味付けが濃すぎるかが分かれ道でしょう。

また、新しい外来語は長い単語が往々にして使われることがあります。

故柴田武さん(言語学者)は、「日本語に定着するにはせめて4拍(拗音を除いたカタカナで4文字)以下でないとね」とおっしゃっていました。

昔から使われている、パン、ガラス、ズボン、バス、タクシーなど多くは4拍以下の語です。

短い、省略形を使うのも定着したしるしかもしれません。

ハンカチーフがハンカチに、パンティーストッキングがパンスト、ゼネラルストライキがゼネスト、コンビニエンスストアがコンビニ、ゴルフのハンディキャップがハンデに、ポリエチレンがポリにという例など数多くあります。

故柴田さんは「ドメスティックバイオレンスも『ドメバイ』になれば定着するかもしれないけれど、あんまりいいことばじゃないからね」と話していらっしゃいました。

省略するには、いろいろな方法があります。始めの数文字だけにして、後を切り捨てるもの。例は少ないのですが後ろだけにするもの。2語のものはそれぞれの先頭だけにするものなどがあります。

はじめの1文字だけにするという、英語の略語のようなやり方もあります。
「超ど級(超弩級)」はもう死語に近いことばですが、日露戦争直後のイギリスの戦艦ドレッドノートが高性能艦だったことから「ド」と略され、さらに「弩(いしゆみの意味)」という漢字が当てられたという複雑な例もあります。

野球の「セ・リーグ、パ・リーグ」も「セントラル、パシフィック」の先頭の1文字だけを取っています。

比較的古いことばにこの例が見られます。最近では外来語が多くなってきたためにこのような「先頭1文字」省略をすると同じようなことばがぞろぞろ出てきて、区別がつかなくなるかもしれません。

ことし(2009年)世界的に流行している新型インフルエンザも、新聞やテレビでは「新型インフル」という見出しを見ることがあります。

さすがにテレビではアナウンサーやキャスターは「新型インフルエンザ」と略さずに読んでいますが、そのうちに「インフル」が出てきはしないか注意してみています。

この「インフルエンザ」も二昔前ぐらいには外来語ではなく「流感」という語も使われていました。「新型流感」「流感に注意」などという使われ方です。これは「流行性感冒」の省略形です。
「流感」が使われなくなった理由の一つには「感冒」という病名が「かぜ」によって大勢を占められたという理由があるのでしょう。

このように、ことばも流行だけではなく、生物における「淘汰(とうた)」と同じような現象が起きていると言えます。

使用頻度が少ないことばでは「残存種」のように古い形のことばが残ることがありますが、みんなが使う頻度の高いことばでは「生存競争」が厳しいのが常です。

(メディア研究部・放送用語 柴田 実)