ことばウラ・オモテ

「ナマあし」ってどんな足

夏の暑さが身にしみるころになると、肌触りの良い生地でできたものが好まれます。 また、ことしは政府の働きかけで「クールビズ」という夏の軽装が官公庁で公認になりました。

もっとも、国会では小泉派は軽装、反小泉派はネクタイにスーツという色分けがあるという人もいます。

鹿児島県指宿市(いぶすきし)では、以前から夏の事務服はアロハシャツにしていますので、なにも今回の「クールビズ」が目新しいわけではありません。

ふだん、めがねをかけている人がめがねを外すと、しまりのない顔に見えることがあります。表情全体がめがねに合わせたものになっているからでしょう。

それと同じで、いきなりノーネクタイ、ノースーツになるとしまりのないスタイルに見えることもありそうです。口の悪い人が「警察につかまった容疑者みたいなかっこう」と酷評するのを聞いたこともあります。

女性が、ストッキングをはかずにいることを「ナマ足」と言うことがありますが、この「足」に注目しました。

「足」と「脚」の違いです。「ナマ足」は多くは「足」という漢字を使います。

辞書を見ると、「哺乳動物には『肢』、昆虫には『脚』を多く用い、ヒトの場合は足首からつま先までを『足』、足首から骨盤までを『脚』と書き分けることもある」(三省堂 『大辞林 第二版』)とあります。

Gパンをはいて素足の場合は「ナマ足」とは言わないようです。

スカートなどで素足でいると「ナマ足」と表現するようです。

それなら「ナマ脚」なのでしょうが、どちらなのかを考えていると、白いアシがちらついて寝られそうもありません。

「足」は脚部一般の総称としても使われ、「足を曲げる」は足首から先というわけではありません。比喩(ひゆ)的に使う場合も「足」で「客足、球足、襟足」などがあります。しかし、「あまあし、ふなあし、ひあし」などは「脚」を使います。

足と脚の使い分けは厳密なようで、そうでもない部分もあるようです。

ひざからくるぶしまでは、体の前の方が「すね」、反対は「ふくらはぎ」と区別がありますが、「もも」の部分には区別はありません。逆に「すね」と「ふくらはぎ」を総称する言い方はありません。注目すべきことにはきちんとことばが対応している一つの例でしょう。

「脚」は上下に分けたときの下の部分という解説もあり、ものを支える飛び出した部分という説明もあります。「アシが美しい」のは「脚」です。

もともと、「ナマ足」はストッキング業界のことばのようですから、「脚」のほうが似つかわしいと考えていますが、「脚」ではよりナマナマしく感じるから一般的な「足」に定着したのかもしれません。

(メディア研究部・放送用語 柴田 実)