最近気になる放送用語

「寸断」?

「(その道路は)土砂くずれで【寸断】されています」と言った場合、その「途切れているところ」は、だいたい何か所くらいあるものなのでしょうか。

「寸断」の本来の意味から考えれば、「途切れているところ」がいくつもないとおかしなことになります。しかし近年では、「1か所だけが途切れている」ような場合でも「寸断」と言うことが多くなっているようです。

解説

まず、「寸断」の「寸」という漢字について考えてみます。「寸」は尺貫法での長さの単位で、約3cmに相当します。ここからの連想で「非常に短い」という意味もあり、「寸劇・寸評・寸暇」などにあらわれています。

「寸断」は、本来「非常に短くなるように断たれる」つまり「ずたずたに断ち切られる」ことを指すことばです。もともとの意味としては、複数個所が断ち切られていないと「寸断」とは言えないはずのものです。

ウェブ上で、次のようなアンケートをおこなってみました。

Q 次の言い方に対する解釈として、お考えにもっともよく当てはまるものをお答えください。

  「その道路は、土砂くずれで【寸断】された。」
      解釈A:「通れなくなったのは1か所」
      解釈B:「通れなくなったところは何か所もある」

① 文脈によって、Aの意味にもBの意味にもなるが、本来はAの解釈が正しい 38%
② 文脈によって、Aの意味にもBの意味にもなるが、本来はBの解釈が正しい 22%
② どのような場合でも、Aの意味である(Bの解釈はおかしい) 21%
② どのような場合でも、Bの意味である(Aの解釈はおかしい) 16%

ここで、①と③を合わせて「〔1か所〕支持」、②と④を合わせて「〔複数個所〕支持」としたうえで年代別に見てみると、若い年代になるほど「〔1か所〕支持」の割合が多くなっていることがわかりました。

「寸断」については、「1か所だけが断ち切られている」という新しい意味も認めなければならない時期に来ているかもしれません。しかし、本来の意味は「ずたずたに断ち切られる」であるということを知っておくのも重要です。「そんな細かいことを気にして、どうすんだん!」などと言わずに、ときには国語辞書を引いてみましょう。

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2013年8月~9月実施、1788人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)