最近気になる放送用語

「絶不調」?

「絶不調」ということばは、どう発音したらよいのでしょうか。

これは比較的新しいことばで、場合によっては放送にはなじまないと感じる人もいます。まず、言いかえられないかどうかを一度考えてみたほうがよいでしょう。それでも使う必要のある方には、若い人になるほど「ゼツフチョー」よりも「ゼッフチョー」という言い方を好む傾向があるということをお伝えしておきます。

解説

まず、「ゼツ(絶)」がことばの頭の部分に付いた場合の音の変化について、『NHK発音アクセント辞典』に出ている単語(二字漢語)を例に考えてみましょう。

〔ゼツのまま〕 うしろがア行(絶縁)、マ行(絶妙、絶無、絶命、絶滅)、ラ行(絶倫)、ガ行([空前]絶後)、ダ行(絶代、絶大)、バ行(絶望)のことば
〔ゼッとなる〕 うしろがカ行(絶佳(ぜっか)、絶海、絶叫、絶句、絶景、絶交、絶好)、サ行(絶賛、絶唱、絶食、絶世、絶息)、タ行(絶対、絶頂)、ハ行(絶版、絶筆、絶品、絶壁)のことば

ハ行のことばは、前が「ゼッ」となるのに加えて、後ろも「パン、ピツ、ピン、ペキ」のように変化しています。同じハ行のことばである「不調」も、ここから考えると「ゼップチョー」となりそうなものですが、実際にはそうなりません。それは、「絶/不調」のような「ことばの切れ目」があるからです。

「ことばの切れ目」がある場合には、音の変化はないのがふつうです。ところが、「絶好調」ということばは「ゼッコーチョー」ですでに定着しており、ここからの連想で「ゼッフチョー」という言い方がかなり多くなっているのです。

ウェブサイト上でアンケートをした結果では、若くなるほど「ゼッフチョー」が多くなっていることがわかりました。

いつもこのコーナーでは、皆さんを抱腹倒させたいと思ってオチを考えているのですが、度が過ぎて拒反応を示されても困るので、今回はこのへんでやめにしておきます。

「絶不調」は…(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、20011年7月~8月実施、379人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)