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「降らなそうだ」? 「降らなさそうだ」?

「降りそうだ」を否定の形にした言い方は、「降らなそうだ」と「降らなさそうだ」のどちらが正しいのでしょうか。

伝統的には、「降りそうにない」という言い方をするか、あるいは「降らなそうだ」のように「さ」の入らない形のほうがふつうだとされてきました。しかし実際には「降らなさそうだ」のほうがふさわしいと考える人も多く、両方とも正しいと考えるのが現状に合っているように思います。

解説

「~なそうだ」と「~なさそうだ」のどちらがふさわしい形なのかについては、用法によって異なります。だいたい、次のような傾向があります。

  • ①「ありなし【存在・非存在】」に関する場合
    ⇒「(問題は)なさそうだ」のように「さ」が入る
  • ②形容詞の否定の場合
    ⇒「(寒く)なさそうだ」のように「さ」が入る
  • ③動詞の否定の場合
    ⇒「(降ら)なそうだ」のように「さ」が入らない
  • ④外見上「ない」の形だが否定の用法ではないもの(「危ない、少ない、汚い」など)
    ⇒「(あぶ)なそうだ」のように「さ」が入らない

ただし、③と④については以前から「~なさそうだ」の形もある程度併用されていました。

「降らなそうだ」と「降らなさそうだ」について、インターネット上でアンケートをしてみました。すると特に西日本を中心として、伝統的な形である「降らなそうだ」よりも「降らなさそうだ」のほうを支持する意見が多く見られました。この結果からみても、動詞の否定の場合に、「~なそうだ」だけでなく「~なさそうだ」を用いてもかまわないように考えられます。

なお、「(本が)つまらない」は語源としては「動詞の否定」なのですが、「本がつまる」という言い方はふつうしません。つまり「つまらない」で一語であると考えられ、分類としては④に近いものです。この場合、「さ」の入った「つまらなさそうだ」の支持率がかなり下がることも、同じアンケートの結果からわかっています。言い方のふさわしさは語によって異なり、まだまだ問題は尽きな(さ)そうです。

「降らなそうだ」? 「降らなさそうだ」?(ウェブ調査、2008年10-11月NHK放送文化研究所実施、776人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)