最近気になる放送用語

「だ抜きことば」?

「大丈夫と思います」という言い方は、おかしいのでしょうか。

「大丈夫だと思います」というように、「だ」を入れた形のほうが放送では抵抗なく受け入れられます。「大丈夫と思います」のような言い方は、【だ抜きことば】と呼べるかもしれません。

解説

ある判断をしているという意味で、「~と思う」という言い方をすることがあります。「~と思う」の前の部分は、そのままでも文として通用する形のものがくるのが通例です。

  • あしたは晴れると思います。」←「あしたは晴れる。」
  • あしたは暑いと思います。」 ←「あしたは暑い。」

これと同じように、形容動詞「大丈夫だ」が正式な「文」として成り立つためには、やはり「だ」を入れておいたほうがふさわしいのです。

  • 大丈夫だと思います。」←「大丈夫だ。」
  • ?大丈夫と思います。」←「大丈夫。」

この「だ抜きことば」について、インターネットでアンケートをしてみました。「『行かなくても大丈夫と思います』という言い方は『おかしい』(『~大丈夫だと思います』が正しい)」という回答が全体で77%にのぼり、抵抗感が強いことがわかります。一方で北海道・東北ではこの言い方に対する抵抗がそれほど強くはないような様子がうかがえました(NHK放送文化研究所、2009年2~3月、763人回答)。

「そんな言い方は自分では使わない」という方も多いでしょうが、実際のニュース原稿を見てみると、だれかが話したことを引用するところなどに、けっこう出てきています。

  • 「フランスは大丈夫と思って成田まで来たので残念です。」
  • 「高さ数十センチ程度だから大丈夫と思わずに…」
  • 「誰からも立派と思われる横綱になってほしい。」
  • 「高齢の母親の面倒が大変と思い…」

聞いていて耳にすんなりと入ってくるのは、やはり「だ」の入った形のほうです。ちょっと頭の片隅においておくと、便利と思います。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)