最近気になる放送用語

「末」は、すえ? まつ?

「10月末」と書かれてある場合には、「すえ」と読むのでしょうか、「まつ」と読むのでしょうか。

「すえ」とも「まつ」とも読むことができます。ただし、どう読むかによって意味が変わってくることがあるので、注意が必要です。放送では、「すえ」は数日間の幅を持ったもの、「まつ」はその月の最終日のことを指すように使い分けています。

解説

まず「すえ」というのは、物の端(はし)の部分(先端・末端)を指すのが中心的な意味です。たとえば「こずえ」は「木の『すえ』の部分」というのが語源です(「こ」は「木(き)」の古い形で、「木(こ)の実」「木(こ)の葉」などにも見られます)。「端の部分」ですから、当然ある程度の幅・長さがあります。この言い方を時間表現に当てはめたのが「10月すえ」です。

いっぽう「まつ」は、公的な発言など、ある程度かしこまった文脈で一般的に使われるようになったことばです。公的な場面では正確さが要求されますから、幅を持っているのはあまり好ましくなかったのかもしれません。そこから、「10月まつ」と言ったら限定的に10月の最終日のことを指す、というようなニュアンスが出てきたのかもしれません。

文研でおこなったウェブ上のアンケートでも、一般の日本人にこのような使い分けがある程度ゆきわたっている様子が見て取れました。「5月すえ」は「5月の終わりの数日間のことを指す(5月の最終日ではない)」という人が64%と最も多くなりました。また別の質問で、「5月まつ」は「5月の最終日のことを指す(終わりの数日間ではない)」という人は51%となり、こちらも一番多い回答になりました。

ただし同じ「~まつ」でも、放送で「年末」や「年度末」という場合には、12月31日(=おおみそか)や3月31日を含めた「時間的に幅がある」期間を指すものとして使うことにしています。つまり「すえ」と同じ用法です。

この連載の原稿は、毎回「今月の末(すえ)までに編集部に送ってください」と指示されているのですが、いつも月の末日(まつじつ)になってからあわてて書き始めています。どうもいけません。

「末」は、すえ? まつ?(アンケート、2009年4~5月実施、705人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)