最近気になる放送用語

「無理」?

さいきん、「無理」ということばの使われ方が変わってきているように感じます。

「無理」ということばは、伝統的には「実現させるのがほぼ不可能な場合」「強引に実現させると大きな問題が起こる場合」などに用いられてきました。ところが若い人を中心に、「やろうとすればできるかもしれないが、やりたくない場合」にも使われるようになってきています。不用意に使うと聞き手の気分を害することにもつながりかねないので、注意が必要です。

解説

「無理」ということばは、もともとは「道理・理屈・理由」などが「無い」という意味でした。ここから、「無理な注文」「無理難題」といった言い方が生まれています。また、自分の依頼が相手に迷惑をかけるという意味で「ご無理を申し上げますが」といった言い方もよく使われてきています。

次の会話を見てみましょう。

「これ、明日までにやっておいてくれる?」

「明日までというのは、ちょっと難しいのですが…/できかねますが…」

日本の社会では、相手からの依頼に対して自分には本当に「できない」と思った場合、このようにやんわりと答えるのが大人のマナーとされてきたものと思います。

いっぽう最近の若者の間では、次のような「無理」の使い方をするようです。

「なに食べる?」

「パスタはきのう食べたから無理。」

つまり、「無理」ということばの持つ意味が軽くなってきているのですね。このような「無理」の使い方が公的な場面にも進出してきて、たとえばコンビニでの客と店員との会話で、次のようなものを耳にします。

「2千円札両替できますか?」

「無理です。」

よほど気心の知れた相手に言うのであればともかく、公的なふるまいが求められる場面でこのような言い方をすると、社会人として生活するのには無理があると思われかねないので、注意が必要です。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)