最近気になる放送用語

「はす? れんこん?」

「はすの煮物」という言い方は、変だと言われました。

煮物や酢の物などにして食べる部分は、「れんこん」と呼ぶのが全国共通語的な言い方です。「はす」は、植物そのものを指す呼び方だと考えるのが一般的です。

解説

「はす(蓮)」のことを日本各地でどう呼ぶか、ということについて見てみると、「植物」としての呼び名が「はす」、「地下茎(食べる部分)」が「れんこん」、という使い分けをしている地域が多いようです。ただし東京では、「はす」ということばで「植物」だけでなく「地下茎」のことも指し示してきた習慣があると言われています。これは、「東京の方言(的なことばの使い方)」の1つだと言えるでしょう。

「はす」と「れんこん」について、NHK放送文化研究所ではウェブ上でアンケートをしてみました(2005年9月実施、2075人回答)。その結果、地下茎の部分については「れんこん」という言い方しか聞いたことがないし、自分も「れんこん」としか言わない、という答えが、関東と甲信越地方に際だって少なかったのです。つまり、関東・甲信越地方ではそれだけ「はす」ということばを見聞きして自分でも使う人が多い、ということになります。東京でのことばの使い方が、周辺の関東・甲信越にも広まったのでしょう(詳しくは2006年3月発行の『NHK放送文化研究所年報2006』をご覧ください)。

東京の人がほかの地域で「はすを食べる」と言ったら「はすの花を食べるのか」と笑われた、という話があります。東京のことばは共通語の「おおもと」になってはいますが、東京のことばすべてが全国共通語であるわけではありません。少なくとも全国放送の場合には、「れんこんの煮物」という言い方をするのがよいでしょう。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)