「がぜん」?
2005.11.24
「こちらのほうが、がぜん優れています」と言ったら、おかしいと指摘されました。
「がぜん」は、もともと「(それまでの状況と変わって)急に」といった意味です。さいきん、言いたいことの「強調」を表す目的で使われるのをときどき耳にしますが、これは本来の使い方ではありません。
解説
「がぜん(俄然)」の「俄」は「にわかに」という意味で、「然」はそのような状態にあることを示すことばです。「がぜんやる気が出てきた」などといったように、「急に」というような意味を表すときに使うものです。
ところが、これが「強調」の意味で使われ始めているようです。その背景には、
- 話しことばとしてふだん頻繁に使うものではないため、本来の意味とは異なる誤解がされやすい
- たとえば「がぜんやる気が出てきた」という文を耳にした人が、これを「とてもやる気が出てきた」と解釈したとしても、それほど大きな問題にはならない
- 「ガ・ゼ」といった濁音が、何となく強調表現としての勢いを感じさせる
- 発音の似ているものとして「断然」があり、ここからの類推が働いた
などといったことがあるように考えています。
実は、この「『がぜん』を強調の意味で使う」というのは、昭和の初期に流行したことがあります。「流行は繰り返す」のでしょうか。
また、強調表現として「イキナリおいしい」というような言い方も出てきているようです(これは特定の地域だけの若者ことばにとどまっていますが)。「急に」を表すことば(がぜん、いきなり)が強調表現として使われる点が共通していますね。
年末が近づいてきて、がぜん忙しくなってきました。ここで紹介した「がぜん」のどちらの意味でも、みなさんには当てはまることと思います。よいお年を!