最近気になる放送用語

にぎりずし「1カン」?

にぎりずしを数えるときに「1カン、2カン」と言うことがあります。この「1カン」は、にぎりずし「1個」を指すのでしょうか、あるいは「2個」を指すのでしょうか。

人によって解釈が異なります。どうしても放送で使いたい場合には、そのことを留意しておく必要があるでしょう。

解説

ものを数えるときの単位として用いることば(助数詞)のうち、「ペアでワンセット」という形で数えるものがいくつかあります。たとえば、「靴1足・靴下1足」は左右ワンセットのものを指す表現で、「靴下を1足なくした」と言ったら左右両方ともなくした意味になります。右だけ(あるいは左だけ)をなくしたのであれば、「靴下を片方なくした」と言うべきでしょう。また、「たらこ1腹(はら)・めんたいこ1腹」は、1匹から取れる魚卵のかたまりで、外見上は「2つ」に並んでいるものです。

いっぽう「1カン」ということばは、「1個」を指すのか「2個」を指すのかがはっきりしません。

にぎりずしを数えるのになぜ「~カン」ということばを使うのか、このことばの語源は何か、ということについては、いろいろな説があるものの、よくわかっていません。「1カン」ということばは料理人が用いる隠語(符丁)で「1個」のことを指す、と書いてある昭和初期の資料があります。このことから、もともとの意味としては「1カン」は「1個」を指したものと想像されます。

カウンターですしを注文すると、同じすしダネを2個ずつ握ってくれることがあります。この習慣は「2カンづけ」と呼ばれるもので、やはり「1カン」は本来「にぎりずし1個」であることがわかります。しかし、この「2カンづけ」で供される一単位としての「にぎりずし2個」のことを「1カン」であると考える人も、かなり多いのが実情です。

放送文化研究所のホームページ上でおこなったアンケート調査の結果によると、「1カン=1個」派は全体で53%、それに対して「1カン=2個」派は47%とほぼ同数でした。ただし年代別には、50歳より上の人たちでは「1カン=2個」派のほうが多い、という結果になっています。また地域差もあり、西日本では「1カン=2個」派のほうが多くなっています。

「まぐろ1カン○○円」と書いてあるのを見て注文し、2個握ってくれるものと思っていたら1個だけだった、という経験のある人もいるかもしれません。私の行く店では、すしは皿に載って目の前を回っているので、このような心配はいりませんが。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)