最近気になる放送用語

いま現在?

「救出活動は、いま現在も続いています」と言ったところ、おかしいと指摘されました。

「現在」ということを強調(あるいはほかの時点と対比)する表現としては、認められる範囲内のことばではないでしょうか。おかしいと指摘されたのは、「いま」と「現在」というほとんど同じ意味のことばが重複して使われているからでしょう。ただし「重複表現」だからといってすべていけない、ということにはならないと思います。

解説

まず、重複表現には「おかしい」と感じられやすいものと、そうでないものとがあります。ただし1982年に文研でおこなったさまざまな重複表現に関するアンケートでは、おかしいものからそうでないものまで、なだらかに連なっているような結果が出ました。つまり、おかしいかどうかをはっきりと区分けできる性質のものではないようです。

「頭痛が痛い・馬から落馬・食事を食べる・日本に来日する」などは、おかしな重複表現の例としてよく挙げられます。こういったものは放送では使うべきではないでしょう。

では、「一番最初・二度と再び・被害を被る・あとで後悔する」などはどうでしょうか。だめだという人と、かまわないという人とがいるでしょう。判断が難しいところです。

「歌を歌う・踊りを踊る・掛け声を掛ける・犯罪を犯す・たばこの火が引火する・○○賞を受賞する」などは、ほかの言い方を考えるのが難しいくらい日本語としてはなじんだ言い方だと思います。

書きことばの場合は、重複表現はなるべく避けるべきだという傾向が強いようです。しかし話しことばについては、「強調・対比」などの意図を積極的に表そうとする場合には、結果的に重複表現になってしまっても許されるものがあるでしょう。

自分が書いた表現の中に重複表現が含まれていないかどうか、そして含まれていた場合にはそれを別の言い方にしてみることはできないかどうか。意識的に気を付けておくことも大事ですね(おっと、これは重複表現でしょうか)。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)