最近気になる放送用語

水が飲みたい? 水を飲みたい?

「水が飲みたい」と「水を飲みたい」とでは、どちらが正しいのでしょうか。

これは昔から論争の種になっている問題で、どちらが正しいのか一概には言えません。この2つの文だけを比べた場合には「水が飲みたい」のほうが一般的だと言うことができますが、では「~(し)たい」という場合には必ず「が」が付くかというとそうではなく、むしろ「を」のほうが多いので注意が必要です。

解説

この問題(「~が(し)たい」と「~を(し)たい」のどちらがふさわしいのか)は、ことばを研究している人たちの間でもいろいろな見解があります。ここでは、だいたいの傾向を紹介しましょう。

おおまかな考え方として、まず「だいたいの場合は『を』だが、『単純な文』の場合には『が』になることもある」と言うことができます。次の文を、ご自身で比べてみてください。

(1)水[が/を]飲んでおきたい

(2)水[が/を]たくさん飲みたい

(3)水[が/を]飲みたい

(1)は「を」のほうがよいように感じますが、(2)はどちらも同じくらい、(3)になると「が」のほうがしっくりとくるのではないでしょうか。このように、「単純な文」の場合には「が」が使われる割合が高まるのです(ただし「が」と「を」とでは、ニュアンスの面で違いが出ることがあります)。

また、動詞の種類によっても差があります。

(4)水[が/を]飲みたい

(5)常識[が/を]壊したい

この「壊す」のように、動作をおこなった結果として対象の物に大きな変化が生じるような動詞の場合には、「単純な文」であっても「が」ではなく「を」が来ることが多いのです。

なお、地域差もあります。特に静岡・山梨・長野などでは、「飲む」などを用いた「単純な文」であっても「を」が使われることが多いようです。

次回もこのコーナー読みたい、と思っていただけるよう、これからもがんばります。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)