最近気になる放送用語

水菓子

和菓子屋さんからの中継で、水ようかんなどのことを「水菓子」と言ったら、見ている人からおかしいと言われました。なぜでしょうか。

「水菓子」ということばは、本来は果実類のことを指すからです。

解説

「水菓子」ということばの成り立ちについて考えてみましょう。まず、関連するものとして「くだもの」「菓子」ということばを取り上げてみます。

古くは、「くだもの」と「菓子」は、ともに「正式な食事以外の軽い食べ物」全般を指すことができることばでした。つまり、果実類・菓子類・間食や、はては酒のつまみなどのことをひっくるめて「くだもの・菓子」と呼ぶことができたようです。2つのことばの違いは、「和語(やまとことば)」か「漢語(漢字書き・音読みのことば)」か、という程度のもので、あまり意味の違いはなかったものと思われます。

これが江戸時代ごろになると、「菓子」ということばが「人が手を加えて甘く作った食べ物」のことだけを限定的に指すように変化しはじめます。いっぽう果実類を指す場合には、上方では「くだもの」、江戸では「水菓子」ということばが使われるようになったようです。

現在では果実類を指す場合に、全国的にも「くだもの」と言うことが多く、「水菓子」とはあまり言わないのが実情です。

なお本来の意味とは別に、一部の業界では、水ようかんやくずもちなどの総称として「水菓子」ということばを使う場合があります。ただし、これはあくまで専門分野での使い方だと心得ておいたほうがよいでしょう。たとえば中継で、相手が「水菓子」と言った場合には、「『水菓子』というのは本来くだもののことなのですが、専門業界では水ようかんなどのことを指すのですね」などと言い添えたほうがよいかもしれません。

なお、最近よく使われる「スイーツ(スウィーツ)」ということばは、お菓子(甘いもののみ)・デザート・ケーキ・和菓子などをひっくるめて指すことばです。現在「お菓子」と言うとポテトチップスなどのスナックも入ってしまうし、また「デザート」と言うと食後に限定されてしまう、などということがあって使われるようになったのでしょう。放送で使う場合には、意味の説明をつけておくようにおすすめします。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)