最近気になる放送用語

いやが応でも?いやが上にも?

「いやが応でも会場は盛り上がっています」と言ったら、おかしいと指摘されました。

この場合は「いやが上にも」と言うべきでしょう。

解説

まず「いやが応でも」について考えてみます。これに似た言い方として「いやも応もなく」というものもありますが、これは「いや(否・嫌・厭)=No)」も「応=Yes」もなく、ということで、「好むと好まないとにかかわらず」「いやであろうがなかろうが関係なく」「とにかく」という意味です。例えば「漢字の間違いが、いやが応でも目に付いた」などのように使います。

次に「いやが上にも」を見てみます。こちらの「いや」は、漢字では(表外字なので放送では使えませんが)「彌」と書き、「状態がだんだんはなはだしくなる様子」を表します(例えば「今までよりももっと栄えること」という意味で「彌栄(いやさか)」という単語があります)。つまり「いやが上にも」は、「ただでさえはなはだしい状態なのに、それに加えてさらに」という意味になります。

質問の「~会場は盛り上がっています」に戻ってみると、会場が盛り上がっているのは普通に考えて「好ましいこと」でしょう。「盛り上がる気配を見せていた会場がさらに盛り上がってきた」ということで、「いやが上にも」と言うのがふさわしいことになります。これに対して「いやが応でも」と言うと、「好むと好まないとにかかわらず、会場が盛り上がってしまっている」というニュアンスになってしまいます。

まとめると、「好むと好まないとにかかわらず」が「いやが応でも」、「さらに」が「いやが上にも」です。このような使い分けはややこしいかもしれませんが、いやが応でも身につけてくださいね。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)