最近気になる放送用語

「~になります」?

中継で「こちらが入り口になります」と言ったら、アナウンスの上司から注意されました。

この場合、「こちらが入り口です」ではなく「~になります」と言った理由を、ちょっと考えてみてください。何か意図するところがあってわざと言ったのであればかまいませんが、そうでないのであれば、この言い方をおかしいと感じる人がいることは、知っておいたほうがよいでしょう。この「~になります」は、近年「~です」とほとんど同じ意味(あるいは「よりていねいな言い方」だと思っている人もいるようです)として使われており、特にファミリーレストランやコンビニエンスストアなどで耳にする機会が多くなっています(ファミ・コンことば)。

解説

まず、動詞「なる」を見てみましょう。これは多義語(意味がたくさんあることば)ですが、助詞「に」を付けて「~になる」と言った場合には、おおよそ次のような意味が生まれます(ほかにもいろいろな用法がありますが)。

  1. 変化・移行した結果が出現する。
    [例] 大人になる。冬になる。中止になる。合計すると二千円になる。
  2. 結果として一定の役割を果たす。
    [例] 番組制作の参考になる。励みになる。

ここで、中継での「こちらが入り口になります」について考えてみましょう。

まず(1)の用法として考えた場合には、たとえばこれから家が建てられる更<さら>地のようなところ(あるいは建築中のところ)で「このあたりが入り口になる予定です」という意味で言ったのであれば、まったく問題ありません。

次に(2)の用法だとすると、目の前にあるものが「結果として」入り口の役割を担っている、というような意味になります。これは一見問題ないように思うかもしれませんが、この場合、「もともと入り口として使うことを意図して作られたものなのに、それを「入り口になります」などと言うのはおかしいのではないか」と感じる人もいるのです。

ただし人によっては、たとえば「(「入り口」というものは本来立派であるべきなのでしょうが、ひとまず我が家では)こちらが入り口になります」というように謙遜<そん>の気持を込めて使う場合もあるので、一概には否定できないのが難しいところです。

はっきりしない言い方で申し訳ありませんが、以上が回答になります。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)