最近気になる放送用語

はなむけ?

異動してきた後輩の歓迎会で「はなむけのことば」を述べたのですが、「それは『はなむけ』ではない」と言われました。

「はなむけ」は「これから去って行く人」に送るものです。「新たに来た人」に対して「歓迎」の意味で使うのは、誤用です(『ことばのハンドブック』P.151)。

解説

かつて日本では、旅立つ人のために「送別会」をする際に、道中の無事を祈って、その人の馬の「鼻」を、これから向かう目的地の方向に「向け」てやる習慣がありました。つまり「鼻向け」です。ここから、「はなむけ」ということばが、旅立ちや門出を祝福して金品・詩歌・激励のことばなどを送ることの意味になりました。

「はなむけ」は、漢字では「餞」と書くことができます(ただしこれは「表外字」なので、放送では使えません)。これは、「餞<せん>別」の「餞」ですね。「新たに来た人」に「餞別」を渡す人はいないでしょう。「はなむけ(餞)」も同じことです。このことを覚えておけば、「はなむけ」を間違って使ってしまうこともないと思います。

これは、本来とは違う意味で使われることが多いことばです。以前に実施した世論調査では、「社長が新入社員にはなむけのあいさつをした」という表現が「おかしくない」と答えた人が、半数を超えていました(『放送研究と調査』1992.7)。

異動していく人に使うのはかまいませんが、くれぐれも異動してきた人に「はなむけ」を送らないように。「来たばかりなのに、もうどこかに行けというのか」などと思われてしまったら、その人に「顔向け」できなくなります。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)