癒し? 癒やし?
2002.04.01
最近の表記の変更で「いやし」が漢字で書けるようになりましたが、「癒し」と書いてよいのでしょうか。
新聞・放送では「癒やし」と書くことに決めています。ワープロなどでは「癒し」と出てくるものも多いので、注意してください。
解説
これまで「癒」の字は、たとえば「治癒」のように、「ユ」と読む場合(音読み)に限って使うことにしていました。これはNHK独自の規定ではなく、国が制定した「常用漢字表」で決められているものです。しかし 2002年の 4月からNHKではマスコミ各社と歩調を合わせる形で、この字を訓読みして「いやし」などに当ててもよいことにしました。
この変更にあたって、なぜ「癒し」ではなく「癒やし」とすることになったのかをご説明しましょう。
正確に言うと、今回「癒」の字に認めた訓読みは、「いえる」と「いやす」です。まず「傷がいえる」はどう書くことになるでしょうか。
a. 傷が癒る b. 傷が癒える
この場合は、仮にどちらで書いても「いえる」と読むことができるでしょう。では、「心の傷もいえ、元気になってきた」はどうなるでしょうか。
a. 傷も癒、~ b. 傷も癒え、~
a. はおかしいですね。ここから、「癒」の漢字の部分は「いえ」ではなく、統一的に「い」とするのがふさわしく、それ以外の部分に送りがなを付けるのがよいことがわかるでしょう。
これを「いやす」にも当てはめると、「癒」の訓読みは「い」だから、もし「癒す」と書いたら「いす」と読むことになってしまいます。だから、その名詞形の「いやし」も「癒やし」という表記をすることになったのです。
これと似たものに「向かう(×向う)」などがあります。送りがなで迷ったら、『新用字用語辞典(第3版)』をご覧ください。