最近気になる放送用語

近づく? 近寄る?

「近づく」と「近寄る」とは、どう違うのでしょうか。

「近づく」は時期についての言及などさまざまな場合に使えますが、「近寄る」は使える場面が限定されています。「近寄る」は「人間・動物が、意志を持って接近する」ことだと言うことができます。

解説

主語が人間(および人間が運転する乗り物)・動物の場合には、どちらも使えます。

  • 犬がこちらに近づいてき(○)
  • 犬がこちらに近寄ってきた(○)
  • 黒塗りの車が近づいてきた(○)
  • 黒塗りの車が近寄ってきた(やや擬人的な言い方)(○)

ところがそれ以外の場合では、「近づく」は使えても「近寄る」は不自然になってしまう場合が多いのです。

  • タイムリミットが近づいてきた(○)
  • タイムリミットが近寄ってきた(×)
  • 夏も近づく八十八夜(○)
  • 夏も近寄る八十八夜(×)

また主語が人聞であっても、話題になっているのが「最終的な到達地」である場合には、「近寄る」は使えません。

  • 彼はやっと目的地に近づいてきた(○)
  • 彼はやっと目的地に近寄ってきた(×)

次のように「接近する」ことが比喩<ひゆ>的な意味で使われている場合にも、「近寄る」は使えません。

  • お近づきのしるしに…(○)
  • お近寄りのしるしに…(×)

ことばづかいの細かい違いなど「近づきがたい」とお思いにならずに、わかりやすくお伝えするよう努力しますので、本年もよろしくお願いいたします。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)