最近気になる放送用語

「定番」

料理番組など「定番」ということばを聞きますが。

「定番」はもともと流行に左右されない基本的な商品という意味の業界用語で「定番商品」の略語です。アパレル業界などでは取り引きの必要からそれぞれの製品に商品番号がつけてありますが「定番」はこの商品番号がずっと変わらない製品を言います。商品番号が変わらないということは、つまり毎年安定した売れ行きがあることでもあるのです。

解説

ところで今一般の人が口にする「定番」はもとの業界用語から転化して「代表的なもの」とか「きまりもの」という意味で使われていることが多いようです。実際には服飾関係はもちろん料理の話などにも使われることが多く、たとえば「この冬の定番コートは」とか「あんこうといえばなべ料理が定番」とか「家庭料理の定番を紹介」というふうな言い方がされています。そういう点では女性語と言えますが最近は男性でも使う人がいます。

「定番」が一般的に使われるようになったのはそう古いことではないようです。辞書類に登場したのはおおむね昭和60年代に入ってからで、語意も一、二を除いてまだ業界用語としての意味しか載せていません。また「定番」という字句からは、ことばの持つ意味がじかに伝わって来ないうえ、雑誌などでは読者に解釈をゆだねるようなキャッチフレーズ的な使い方もみられます。そういう意味では専門用語から一般用語に変わる途中のことばと言えるのではないでしょうか。