誤読の多い四字熟語
「順風満帆(じゅんぷうまんぱん)」「上意下達(じょういかたつ)」などの読み
2013.08.01
「物事が順調に運ぶこと」を意味する「順風満帆」について、「じゅんぷうまんぽ」という読みを時折耳にします。正しくは「じゅんぷうまんぱん」ではないでしょうか。
そのとおりです。「順風満帆」の読みは[ジュンプーマンパン]です。
解説
「順風満帆」は「順風(追い風)を帆いっぱいにはらむこと。転じて物事がすべて順調に運ぶこと。ことが非常にうまく進むこと。その様子」を意味します。この語の伝統的な読みは[ジュンプーマンパン]です。
「順風満帆」が[~マンポ]と誤読されることが多いため、辞書の中には「じゅんぷうまんぱん【順風満帆】」を見出し語にした記述の中で、ことばの意味に加えて「『満帆』を『まんぽ』と読むのは誤り」と明記している辞書もあります。
このような四文字の熟語のうち一般に誤読されることが多いことばについて、いくつかの語とその伝統的な読みを改めて記しておきます。
- 「一言居士」 ○イチケ゚ンコジ ×イチコ゚ン~
- 「一期一会」 ○イチコ゚イチエ ×イッキ~
- 「一言一句」 ○イチコ゚ンイック ×イチケ゚ン~
- 「一世一代」 ○イッセイチダイ ×イッセイ~
- 「画竜点睛」 ○ガリョーテンセイ ×ガリュー~
- 「旗幟鮮明」 ○キシセンメイ ×キショク~
- 「言語道断」 ○ゴンコ゚ドーダン ×ゲンコ゚~
- 「上意下達」 ○ジョーイカタツ ×~ゲダツ
- 「千言万語」 ○センケ゚ンバンコ゚ ×~マンコ゚
- 「千載一遇」 ○センザイイチク゚ー ×センサイ~
- 「多士済々」 ○タシセイセイ ×~サイサイ
- 「同行二人」 ○ドーキ゚ョーニニン ×ドーコーフタリ
- 「女人禁制」 ○ニョニンキンゼイ ×~キンセイ
- 「波乱万丈」 ○ハランバンジョー ×~マンジョー
- 「老若男女」 ○ローニャクナンニョ ×ロージャクダンジョ
放送では、こうした語についてはできるだけ言い添えや言いかえをして分かりやすくするように努めています。また、これらの語に含まれる表外字と表外音訓(常用漢字表にはない字と読み)などについての表記は、ひらがなにし、漢字を使う場合にはルビを振って用いています。
(『NHK日本語発音アクセント辞典 新版』、『NHKことばのハンドブック 第2版』『NHK漢字表記辞典』参照)
ところで、私もNHKに入るまでは、「多士済々(たしせいせい)」の読みは「たしさいさい」だと思い込んでいました。ところが、新人時代のあるとき部内の会合で「たしさいさい」と言ったところ、「それを言うなら『たしせいせい』だ!」と先輩記者から即座に厳しく注意されたことがあります。その当時は「なにも満座の中で誤りを指摘して恥をかかせなくてもよいではないか」と、注意した先輩のことを少し恨めしく思ったものです。しかし、「小言幸兵衛」とか「重箱隅右衛門」などと嫌みを言われながらも後輩の私どもを端的に厳しく指導してくれた先輩たちのおかげで、少しでも正しいことばづかいを身につけていくことができたと今では大変ありがたく思い感謝しています。