放送現場の疑問・視聴者の疑問

「初詣客」という言い方は?

年末年始になると、各地の神社や寺の「人出」予想や正月三が日のにぎわいぶりを伝えるニュースが出てきます。こうしたニュースの場合は、一般に「初詣」という言い方はしないほうがよいと先輩記者から聞いたことがあるのですが・・・。

「~客」と言うと神社・寺側からみた言い方になるので、なるべく「初詣の人たち」などと言いかえるほうがよいでしょう。

解説

こうした場合の言い方について、過去に放送用語委員会などでの決定や取り決めはありません。「初詣」「参拝」のように「~客」と言うと、神社や寺側あるいは運輸・鉄道会社の側からみた言い方になります。このため、神社や寺・行楽地の人出やにぎわいを伝えるときには、一般に「~客」という言い方は避けて「○○に訪れた人」「初詣の人たち」「参拝に来た人々」などと言った方がよいでしょう。

<例>ことしの正月三が日に各地の神社やお寺に初もうでに訪れた人や行楽地に出かけた人は、・・・。

神社や寺の正月に向けた準備の様子など受け入れる側がニュースの主体になっているときや、簡潔さを求められる表記やスーパーについては「~客」という言い方や書き方をするときもあるでしょう。

*「初詣」の「詣」の漢字は、以前は「常用漢字表」にはありませんでしたが、NHKでは「詣」を「常用漢字並みに扱う表外字」として独自に使うことを決め、「はつもうで」については「初詣で」と表記してきました。しかし、去年11月に改訂された「常用漢字表」では「詣」が新たな字種・音訓として追加され「参詣」「詣でる,初詣」の語例が示されたことから、これに合わせて「はつもうで」は「初詣」と表記しています。なお、「初詣」以外は、原則として「○○詣で」と送りがなを付けることにしていますが、個別の事例によっては送りがなを付けない場合もあります。

(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.166『NHK漢字表記辞典』p.455、p.559参照)

(かんざし)のゆれつゝ下る初詣」(山口青邨)

(メディア研究部・放送用語 豊島秀雄)