放送現場の疑問・視聴者の疑問

「老人」「お年寄り」は、何歳から?

9月の第3月曜日は「敬老の日」ですが、放送で「老人」や「お年寄り」という場合、何歳くらいの人を指しているのでしょうか。

特に決まりはありません。しかし、こうした言い方に不快感や抵抗感を持つ人も多く、言いかえをくふうするなど、注意して使っています。例えば、「還暦を迎えた老人たち」というような場合には、「還暦を迎えた(過ぎた)人(方)たち」などと言いかえることができます。

解説

法律では、老人福祉法が「(老人ホームへの入所などの対象が)65歳以上の者」としているほか、国民年金法でも「老齢基礎年金の支給は65歳に達したとき」などとなっており、放送でも以前は65歳を「老人」という語を用いる場合の一つの目安にしていたようです。しかし、高齢化社会が進み平均寿命もグーンとのびた今の時代に、この年齢以上の人たちを一概に「老人」「お年寄り」とするには無理があるようです。65歳以上でも、今や第一線で働いている人たちが増えていますし、たとえ働いていなくても「老人」や「お年寄り」と言われることを心外に思ったり不快感を抱いたりする人が大勢います。このため、「老人」「老女」「おじいさん」「おばあさん」などということばは、使い方に注意しています。例えば、「還暦を迎えた(過ぎた)老人たち」というような場合には、「還暦を迎えた(過ぎた)人(方)たち」などと言いかえられます。

他のメディアでも、最近では「高齢者」や「年配の女性(男性)」ということばを使ったり、「○歳の男性(女性)」などと、具体的に年齢を入れたりする傾向がうかがえます。

インタビューや中継番組で、"おじいちゃん""おばあちゃん"と呼びかけるのも、相手に不快感を与える場合があります。名前がわかっている場合には、「○○さん」と名前を言って話しかけるのも一つの方法です。

(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.216参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)