放送現場の疑問・視聴者の疑問

「幕間」の読みと放送での表記は?読み×[マクマ]→○[マクアイ]表記×「幕合い」→○「幕あい」場合により「幕間」とも書く

「芝居で一幕が終わって次の幕が開くまでの間」を指す「幕間」は、「まくあい」と読むはずですが、「まくま」という読み方も耳にします。放送では、どのように読んでいるのでしょうか。

「幕間」は [マクマ]と読まれることも多いようですが、放送では演劇・芝居の世界での伝統的な読み方・言い方に合わせて[マクアイ]と読んでいます。また、「幕間」の「間」を[アイ]と読むのは表外音訓(常用漢字表にない読み)なので、放送での表記は「幕あい」にしています。しかし、場合によっては(番組の趣旨・内容によっては)「幕間」と書き表すこともあります。「幕合い」とは書きません。

解説

「幕間」[マクアイ]について『演劇百科大事典』(平凡社)は、「まくあい 幕間」の見出し語で次のように記述しています。

<一つの場面が終わって幕が引かれてから、次の幕が開くまでの間をいう。一つの狂言全体が終わって次の狂言が始まるまでの間も同様である。(以下略)>

この「幕間」が、舞台中継(TV)などで[マクアイ]ではなく[マクマ]と読まれる例もでてきたことから昭和37(1962)年6月の第512回放送用語委員会で、「幕間」の読みと表記を審議しました。その結果、以下のように決定されています。

<「幕間」の読みと表記>

  • ①読みは[マクアイ]とする。
  • ②表記は、「幕あい」を第一とし、場合により「幕間」と書き表してもよい。

上記の決定理由について、第512回放送用語委員会の審議内容を掲載している当時の『文研・月報』(1962年8月)から一部抜粋します。

<理由>

  1. 従来は一般に「幕間」と書いて[マクアイ]と読んでいたが、表記にひかれて[マクマ]と読む例がでてきたものと思われる。
  2. しかし、この語は、幕の合い間が省略されて[マクアイ]となったといわれ、演劇用語としては、[マクマ]とは言わず[マクアイ]が普通である。したがって、放送においても、[マクアイ]を採った。
  3. また、表記については、当用漢字の音訓表では「間」と書いて[アイ]と読むことはできないが、慣用の強い専門用語と見て、「幕間」と書き表すのを第二として用いてよいこととした。なお、「幕あい」と書くのを第一としたのは、[マクマ]と読み誤る危険を少なくするため、および当用漢字音訓表を尊重。

ところで、同じ演劇・芝居用語で「悪人の役」を意味する「敵役」を[テキヤク]と読む人も多いようですが、この語の読みは[カタキヤク]です。

(『NHK日本語発音アクセント辞典 新版』p.862、p.165『NHK新用字用語辞典 第3版』p.523参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島秀雄)