放送現場の疑問・視聴者の疑問

「バスジャック」という言い方は?

バスの乗っ取り事件を伝える際、「バス乗っ取り(事件)」に加え最近「バスジャック(事件)」という書き方や言い方も見たり聞いたりしますが、どちらを使えばよいでしょうか。

原則として「バス乗っ取り(事件)」を使うほうがよいでしょう。

解説

ニュースや番組の用字用語・伝え方の大原則は、視聴者にわかりやすく親しみやすい言い方や表記をすることです。その際、(1)正しく的確なことば・日本語を使う(2)外来語・カタカナ語を使う場合でも、できるだけ言い添えや説明をする(3)外来語・カタカナ語の本来の意味や使い方を認識したうえで使うことを心がけたいものです。

お問い合わせの件について以上の観点から考えてみますと、(1)「乗っ取り」というなじみのある日本語があり(2)この語を使えば特に言い添えや説明をする必要もありません。さらに、(3)の観点から「バスジャック」の由来である「ハイジャック-hijack」についてみてみましょう。「hijack」は米語(アメリカ英語)で、「強奪する。(武力で航空機などを)乗っ取る」という意味があります。その語源についてカタカナ語辞典や英語辞書は、「米国西部のギャングが『へーイ, ジャック』と呼び止めて強奪したことから」「強奪犯の被害者に対する命令“Stick’em[or your hands] up high,Jack.”」(いわゆるホールド・アップ―手を上げろ!のときのことば)などの説をあげています。いずれの説にしろ、「ハイジャック」という語の成り立ちからみて「バスジャック」という言い方には無理があります。また、文字数も「(バス)ジャック」「(バス)乗っ取り」と同じ4文字で、あえてニュースや一般番組で「バスジャック」を使う必要があるとも思えません。

このため、ことし7月の東名高速での事件でバスを乗っ取った少年が言った「バスジャックをした…」いうことばや被害者・関係者の談話・発表文を直接引用する必要がある場合などを除いて、原則として「バスジャック」は使わずに「バス乗っ取り(事件)」「○○にバスが乗っ取られた事件で…」「バスが乗っ取られました」などと表現したほうがよいでしょう。

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)