放送現場の疑問・視聴者の疑問

〔カタ〕 「形」と「型」

釣り人が「(釣り上げた)魚のカタがよい」などと言うときの「カタ」を 漢字で表記する場合、「形」と「型」のうち、どちらにすればよいでしょうか。  また、「形」と「型」の表記の使い分けについても教えてください。

釣り用語の「カタ」は一般的に魚の大きさを指し、表記は「型」です。ただ、放送で単に「魚のカタ・型がよい」と言われても「魚の姿・かたち」を指すと受け止める人も多いでしょうから、ニュースや一般番組では「魚の大きさ」を示すことがわかるような言いかえや言い添えをしたほうがよいでしょう。

解説

釣り関係(釣り人や釣り船業者・船宿)で「魚のカタがよい」「この磯はカタのよい○○が釣れる」などと言う場合、普通「魚の姿・かたち」ではなく「魚の大きさ・サイズ」を指します。「カタがよい」の「カタ」は「型」と書きます。スポーツ紙の釣り欄や釣りの専門誌でも、魚の大きさ・サイズを示すのに「(釣り上げた)魚の型がよい」「型のよい○○」「大型の○○」「良型(揃い)」などの用字用語・表記が一般的です。また、釣りの用語集や釣りに関する本でも「『型』―魚の大きさ・サイズをいう」などと記しています。

しかし、ニュースや一般の番組で単に「魚のカタ・型がよい」と言われたり表記されたりしても、視聴者の中には「魚の大きさ・サイズ」ではなく「魚の姿・かたち」を指すと受け止める人も多いと思われます。このため、このような業界用語や専門用語については、「○○センチ級の大きさの魚」「重さが○○キロもある~」など、なるべく具体的にわかりやすく言いかえや言い添え・説明をしたほうがよいでしょう。また、表記に迷ったときには、「カナ・かな」表記も選択肢の1つです。

ところで、「形」と「型」の使い分けについて文化庁の『言葉に関する問答集 総集編』は「意味が似ているうえに、字音が同じ『ケイ』であるから、相互に紛らわしい。しかも、いずれも同じ『かた』という字訓を持っているから、音読の場合も訓読の場合も、その使い分けが問題になる」と記しています。

ここでは、「形」と「型」の表記の使い分けのうち、「かた」の字訓の場合の使い分けについて『NHK新用字用語辞典 第3版』に載っている語例に一部私の言い添えも入れて以下に示しておきます。

  • かた 形:物の姿・かたち
  •     跡形もない 女形 形なし 形見(分け) 柔道の形 自由形 手形 波形(の模様) 花形 ひし形
  • かた 型:モデル・決まった形式 
  •     鋳型 うるさ型 大型~(~車 ~店 ~予算) 型紙 型式証明(航空機など) 型染め 
  •     型どおり(のあいさつ) 型にはまる 型破り 型枠 木型 血液型 芝居の型 新型 
  •     縦型 2007年型 ひな型 紋切り型

* 「形」と「型」を使った熟語で読みが同じ[アシカ゚タ][カミカ゚タ][ハカ゚タ]は、表記を次のように使い分けています。

  • 「足形」―踏んで残る足の形        「足型」―靴や足袋の型
  • 「髪形」― 一般に髪のかたちを指す    「髪型」―高島田など
  • 「歯形」―歯でかんだ跡 ~が付く     「歯型」―(入れ歯などをつくるために取る)歯の型、
  •                                 歯そのものの並び ~を取る

* ちなみに、「形」と「型」の字音の[ケイ]を使った熟語で、読みが同じである<「定形」と「定型」>[テイケイ]は次のように使い分けます。

  • 「定形」:一定の形  ~郵便物 
  • 「定型」:決まった型 ~詩

(『NHK新用字用語辞典 第3版』p.93ほか参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)