放送現場の疑問・視聴者の疑問

「異常」と「異状」

「(健康診断で)イジョウがない」という場合、「異常」と「異状」のうち、どちらの漢字を使えばよいでしょうか。

「診断結果は異常なし」など、「異常」を用います。

解説

「異常」は「正常」の対をなすことば・対語です。「~な発達、~な執念、信号機の~」など「正常でない、普通でない」という意味で一般的に使います。

一方、「異状」は「ふだんの状態と違った様子」を示す語で、医師法の「異状死体」(第21条[異状死体等の届出義務])や「西部戦線異状なし」(ドイツの小説家レマルクの作品名)など限定的に使います。また、警備員の巡回報告などの際に使われる「イジョーナシ!」は「異状なし!」を用います。

NHKも加盟している日本新聞協会の『新聞用語集 2007年版』は「表記の原則」の中で、「異常」と「異状」について次のように示しています。

  • =異常[一般用語。正常の対語、アブノーマル。名詞・形容動詞]異常乾燥、異常気象、異常事態、異常な行動、異常に緊張、異常発生、エンジンに異常、診断結果は異常なし
  • =異状[限定用語。普通と違った状態。名詞]異状死(体)<医師法>、西部戦線異状なし(レマルクの作品名)

(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.16参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)