放送現場の疑問・視聴者の疑問

「定年」と「停年」

今年(2007年)は「団塊の世代」と言われる人たちの多くが「ていねん」を迎えるそうですが、この「ていねん」について辞書では「定年」と「停年」の2つの書き方を並べて示しています。しかし、テレビでは「定年」という書き方だけを目にします。「定年」に統一しているのでしょうか。

辞書では「停年」の表記も示していますが、放送では一般に広く用いられている「定年」を使うようにしています。

解説

官庁や企業で退官・退職すると定められている年齢を意味する「ていねん」の漢字表記について、ほとんどの国語辞書が「定年・停年」「停年・定年」あるいは「定年(停年)」など、「定年」と「停年」を並列または許容する形で掲げています。

これを戦前の国語辞書や文献・資料でみてみますと、「停年」のほか「定年」の表記もみられますが、その多くは「停年」を示しています。例えば大槻文彦著『大言海』(昭和7~12年発行・冨山房)は「ていねん 停年」の見出し語で(一)實役停年ノ略。陸海軍ノ現役武官ガ、同一ノ官等ニ停マリテ服役スベキ年限。(二)退職スベク定メラレタル一定ノ年齢」と記しています。また、昭和18年発行の『日本語アクセント辭典』(日本放送協會編纂)も「テイネン 停年」「テイネンセイ 停年制」と「停年」を用いています。 しかし、戦後次々に新しい法律が制定される中で各種法律の条文などに「停年」と「定年」という表記の異なる語が出てきたことから、昭和20年代後半(1954年)になって法令用語は「定年」に統一されることになりました。これをきっかけに一般に「停年」より「定年」が広く使われるようになったようです。(*注)

こうした流れの中で主な新聞社や通信社も「定年」で表記を統一しており、NHKでも昭和33年7月の第401回放送用語委員会で「定年」のみを用いることを決めました。「定年」の用語決定について当時の用語委員会の記録には次のように書かれています。<「停年」とも書くが、放送では「定年」に統一する。新聞も「定年」に統一している。各種の法律における用例を調べると、多くは「定年」であり、その他の法律も今後の改正のさいには「定年」に統一することになっている。>

(*注)この法令用語の統一によって一般に「停年」より「定年」が多く用いられるようになったこと(「停年」があまり用いられなくなったこと)が、文化庁の『言葉に関する問答集 総集編』(p.78~79)や一部の辞書に記されている。

(『NHK新用字用語辞典 第3版』p.374参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)