放送現場の疑問・視聴者の疑問

「礼拝」の読み

神や仏を拝むことを意味する「礼拝」について、「れいはい」と「らいはい」という2とおりの読み方を耳にします。宗教・宗派によって読み方が違うということですが、放送での読み分けはどのようにしているのでしょうか。

仏教では[ライハイ]、キリスト教などでは[レイハイ]と読んでいます。

解説

「礼拝」の「礼」の読みには、「呉音」の[ライ]と「漢音」の[レイ]があります。このうち、「呉音」(中国・六朝時代の南方―呉の発音といわれる)は、「漢音」よりも先に日本に伝わったとされ、比較的古い時代のことばや仏教用語の読みに多く用いられています。「礼拝」の読みも、仏教では「呉音」の読みの[ライ]を用いて[ライハイ]と読みます。しかし、キリスト教やイスラム教では同じ「礼拝」でも「漢音」の[レイ]を用いて[レイハイ]と読みます。放送でも宗教・宗派によって次のように読み分けています。

  • 「礼拝」・・・・ライハイ(仏教)
  • 「礼拝」・・・・レイハイ(キリスト教やイスラム教)

この「礼」を語頭にすることばの読みを、『NHK日本語発音アクセント辞典』から幾つか拾い出してみますと…

  • [ライ~]
  • ライサン  *礼賛
  • ライサンシャ  礼賛者
  • ライハイ  礼拝[仏教用語]
  • [レイ~]
  • レイセツ  礼節
  • レイセツ  礼式
  • レイハイ  礼拝(キリスト教など)
  • レイボーコー  礼奉公(お~)

*「礼賛(らいさん)」は、今では一般に「偉業や偉大さをほめたたえたり、ありがたく思ったりする」意味とされていますが、本来は仏教からきた語です。仏教用語としては「三宝(さんぼう)(仏・法・僧)を礼拝して(拝んで)、その功徳を賛嘆すること」を意味します。

なお、古代中国の経書(けいしょ)―儒学の経典(きょうてん)―である「五経」の中の「礼記」の読みは、[ライキ]です。

(『NHK日本語発音アクセント辞典』P965~966、P985~987、『NHKことばのハンドブック 第2版』P211参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)