放送現場の疑問・視聴者の疑問

「役不足」

「役不足」ということばが、「自分には大役すぎる」などの意味で使われている例を放送でも時たま耳にします。誤った使い方ではないでしょうか。

ご指摘のように、「役不足」を「大役すぎる」「荷が重い」などの意味で使うのは誤用です。

解説

「役不足」とは、「(1)俳優などが、自分に割り当てられた役に対して不満を抱くこと。(2)その人の力量に比べて、役目が軽すぎること。」(『広辞苑』岩波書店)です。このように「役不足」は、本来は「芝居や演劇で割り当てられた役が自分の実力・力量に対して軽すぎると役者・俳優が不満を示す」ことから出たことばです。これが転じて、一般には「与えられたポストや仕事が、その人の能力・力量に対して軽すぎること。つまり、軽い役目なので力を十分に発揮できないこと」という意味で使われます。

ところが、「こんな大役は、私には役不足なので辞退します」「会長のポストは、私では役不足ですのでお断りします」などと、「役不足」の本来の意味とは反対に「自分には大役すぎる」「荷が重い」という意味で誤って使われる例が目立ちます。「その役目は私では力不足でつとまりません」という趣旨で本人は謙虚に言おうとしたつもりでも、実際には「その役目は私には役不足です」と言ってしまっては、逆に尊大な言い方になってしまいます。

このほか「役不足」について、「同期の仲間やライバルが多すぎて役職のポストが不足している」という意味だと誤って思い込んでいる人もいるようです。今の日本の厳しい競争社会・時代状況を反映しているのでしょうか。

NHKが平成5年(1993年)に行った「ことわざ・成句の意味のゆれ」についての調査でも、「役不足」の意味について正解は30%にとどまり、残りの70%、つまり3人に2人は誤った解釈をしていました。

(『ことばのハンドブック』P185参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)