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放送現場の疑問・視聴者の疑問

「見合わせる」の使い方は?

先日、私鉄の踏切で電車と自動車の衝突事故がありました。この時放送で「○○線は、現場と一部の区間で列車の運転を見合わせています」と伝えていました。この場合、線路の破損状態などからみて「見合わせる」という言い方は適当ではないと思うのですが・・・。

事故や停電で電車などを実際に物理的に動かすことができない時には、「運転を見合わせる」という表現は的確ではありません。「運休する」または「不通になっている」などと言ったほうがよいでしょう。

解説

このような事故のニュースで、復旧作業がはかどらないために電車が動いていない状況を伝えるのに、(1)○○線は(列車の)運転を見合わせています(2)○○線は運休しています、という2通りの言い方をよく耳にします。(1)と(2)の言い方の、どこに違いがあるのか考えてみましょう。

 「見合わせる」には、「たがいに(顔を)見合う」という意味に加えて、「実行するのをやめて様子を見る」「しばらく差し控えて時期をみはからう」などの意味があります。つまり「実行できないわけではないが諸般の事情を勘案してしばらく実行を差し控える」ことです。「雨が降りそうなので外出を見合わせる」といった場合は、外出しようと思えば外出できないわけではなく、必要があれば外出することもあり得るということを含んだ表現です。これを鉄道の場合に置き換え、大雨など天候悪化で列車運行の条件に変化が予想される場合に運転を一時的に差し控えているのなら、「(運転を)見合わせる」という表現でよいでしょう。また、一定の強さの地震が起きた場合、JRや私鉄各社では線路の破損などがないかどうか安全が確認されるまで一時的に列車の運転を控えます。このように「列車の運転に問題がないかどうか状況を判断している段階」を指す場合なら、「(運転を)見合わせる」という言い方が的確でしょう。しかし、大雨による土砂崩れなどで線路が埋まったり鉄橋が流されたりした場合や、事故や落雷による停電などで物理的に列車を動かすことができない場合には、「運休(する)」や「不通(になっている)」と言ったほうがよいでしょう。鉄道関係をはじめ交通情報を伝えるにあたっては、今の状況はどうなっているのか、復旧の見通しはどうなのか、利用者(客)が一番知りたい情報を、より具体的に的確に表現していきたいものです。

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)