放送現場の疑問・視聴者の疑問

風水害関係のニュースを伝える際に心がけていることは?

日本列島は、例年梅雨入りから台風シーズンにかけて土砂崩れなどの災害が多く発生します。こうした風水害関係のニュースを伝える際に用語・表現上で、どんなことを心がけているのでしょうか。

「わかりやすく、やさしく、ていねいに」。これが音声・映像で情報を伝える放送メディアの表現の基本です。中でも生命・財産に影響を及ぼす災害関連の情報を伝える際は、この基本がとくに大切です。

解説

風水害関係のことばのうち次のようなことば・言い方については、なるべく右に示したように言いかえることにしています。


  • ◇家屋(建物)の全壊・半壊→壊れた家(建物)
  • ◇家屋(建物・橋りょう)の流失→流された家(建物・橋)
  • ◇床上浸水・床下浸水→床上まで(床下が)水につかった家
  • ◇橋りょうの破損→壊れた橋
  • ◇田畑の冠水→水をかぶった田畑
  • ◇り災者→被災者

(『ことばのハンドブック』P159参照)

  • ▼私が駆け出し記者のころ、警察や消防の発表に多く使われる硬く難しい用語を「そのまま使うことは避けて、なるべく言いかえや言い添えをしなさい」とデスクから厳しく言われました。
  • ▼昭和40年代初め、「床上浸水」を言いかえて「床上まで水につかった家」と言うのに対し、「床下浸水」を「床下まで水につかった家」という言い方もしていました。これに対し、「床上まで水に・・・」はよいが、それと対比して「床下まで水に・・・」という言い方は不適当・不的確ではないか?という声が放送現場や視聴者から寄せられました。このため、昭和43年10月の第672回用語委員会で「床下浸水○○棟」の言いかえは「床下が水につかった家○○棟」「床下に水が入った家○○棟」などとする、と決めています。

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)